「送別会は不参加で。」
と、話すのは同じ部署の木村だ。彼がこの会社に入社してから4年が経っている。
※小説風第一弾は以下参照。
「帰った後に電話してくるのやめて頂けますか?」 - くたびれリーマンの日々
本日、本田主任が転職する為、弊社を退社する事が発表された。本田主任は、人望が厚く上司からも後輩からも慕われている。木村が新人の時から現在まで、一番世話をしていたのは本田主任である。
そんな彼の送別会の出欠確認をしている際の出来事だ。
木村も彼を慕っていたのは間違いない。しかし、彼の送別会に不参加を表明したのだ。参加は強制なわけではないが、世話になった上司の送別会だ。不参加の理由を聞いておく必要がある。
「どうした?その日は都合が悪いのか?」
「あ、はい。その日は前から合コンの予定があったので。」
私は耳を疑った。世話になった上司の送別会を断って、合コンに行くと宣言してきたのだ。合コンはいつでも出来るが、本田主任の送別会は一度きりだ。木村も慕っていたのに。
「合コンか。その予定はずらせたりしないのか?本田主任の送別会は一度きりだぞ。お前も世話になっただろう。」
「予定はずらせません。その日の出会いも一度きりです。そして、別れより出会いの方が重要ではないでしょうか。申し訳ありません。それでは、失礼します。」
木村は自信に満ちた顔で話した後、自席に戻る。その後ろ姿は、いつもより大きく見えた。何も言えない私が情けない。
私は席を立ち喫煙所に向かう。
タバコに火を着け、一服。自分で吐いた煙が目に入り、涙が溢れる。いや、タバコの煙のせいではないのかもしれない。
「別れより出会いか。どちらも大事だよな。」
つづく・・・かも。
この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。