くたびれリーマンの日々

ジャパニーズサラリーマンが様々な事を書いていく予定。

小説風ブログ「夢破れて」

 

「ゆめはサッカーせんしゅになること」

 

   古ぼけた1枚の紙に汚い字で力強く書かれていた。来月から東京で働くこととなり、自宅の荷物を整理している。

 

   私がサッカー選手になっていたのであれば、この古ぼけた紙に値打ちが付いたのだろう。

 

    無価値な紙を丸め、荷造りを進める。無論、私はサッカー選手ではない。20数年前の私へ夢を叶えられなくて、ごめんなさい。社会の荒波に揉まれ、新たな夢を叶えるよ。

 

夢ってなんだ?

 

   来月から、それなりの名のある大企業に就職する事が決まっているが、そこには本当にやりたい事があるのか。

 

   少し片付いた部屋を見渡しながら、物思いに耽る。最後に残しておいた机に目を向ける。小学時代のチームの集合写真が立て掛けられ、その周りに埃の被ったトロフィーが並べられている。

 

「お前らの代は1人一個トロフィーがあるのかね。」  

 

    遥か昔に言われたセリフだが、鮮明に思い出せる。同時に兄のチームの前に神々しく並べられたトロフィーを思い出す。

 

    我々のチームでは、卒業時に過去に獲得したトロフィーを選手内で分け合うのが恒例となっている。チームの人数分の回数、表彰されないとトロフィーは一人一人にはなくなってしまう。

 

結果的にどうだったっけな。

 

   埃臭い部屋を喚起する為、窓を開け、外を覗く。小学生くらいの子供が無邪気にボールを追いかけている。昔を思い出しつつ、タバコに火をつける。夢も思い出もタバコの煙も儚く消えていく。

 

つづく。